臨床心理士のお給料事情

えっ!私の年収低すぎ?の写真を無料ダウンロード(フリー素材) - ぱくたそ

 


 

えっ、私の年収低すぎ・・・?
満を持してこの画像を使います。
就職したての頃、本当に毎日お金のこと、将来のことばかり考えて過ごしていました。
 
当時私は、公立の総合病院で週5日の非常勤職員(時給約1300円)として働いていました。
週5なのになぜ非常勤扱いだったのかは分かりません。ただ、私の病院は行政改革の一環で、数年前から大幅に賃金が削減されたようでした。
非常勤のため、賞与、昇給はなしです。健康保険には入れました。
 
この時の月給(額面)は、
1日7.5時間×およそ月20日勤務=197550円 です。
ここから健康保険や年金・所得税などが天引きされ、手取りは大体15万円前後でした。
 
これを見て皆さんはどう思いますか。
安いですか?貰いすぎですか?
 
 
当時の私は一人暮らしだったので、とても少なく感じました。
家計のおよその内訳を公開します。
 
<固定費>
家賃 約60000円
電気代 約3000円
ガス代 約3000円
水道代 約2000円
携帯電話 約6000円
スーパーヴァイズ費用 10000円(5000円×月2回)
食費 約30000円
その他生活雑貨など 約10000円
 
計 約124000円
 
ここまででなんと26000円しか余剰がありません。(家賃は、都会で一人だったのである程度セキュリティを担保したらこうなりました。これでも交渉して5000円値引きしました金額です。)
友達と遊んだり、デートしたり、好きなものを買ったり・・・金額や場所がとっても限られてきます。
当然ながら貯金はほとんどできませんでした。
 
なんでなりたい仕事に就けたのにこんな気持ちなのか、こんなに勉強してきたのになぜこんなに貧乏なんだろう・・・毎日何かを呪ってました。
 
皆さんは臨床心理士になりたいと一念発起し、大学を卒業し、大学院に入り、居場所に困る実習や苦しい修士論文などの数多の戦いを終え、晴れて臨床心理士になりました。私もそうでした。
 
そして就活。
・非常勤 時給:1200円 週2日~ 保険なし
・パート労働者 時給:1500円 週3日~ 経験3年以上
・正社員 月給198000円~ 
 
こんな求人ばかりです。
 
 
・・・あれ???なんか様子がおかしいですね。私も当時思いました。
 
給料低すぎでは。正社員として働ける職場も少なすぎでは。ほとんどないです。
もう求人票を見ている時点で心が折れました。
キラキラ輝く夢の心理士ライフはどこに行ってしまったんでしょうか。
 
 
ここで、院卒者の初任給平均を見てみましょう。
 
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」より
 
院卒の初任給の平均は男女計で238900円です。
そうなんです。平均を大幅に下回っているんです。心理士界は。
無理ゲーやん。
 
そして、心理士の仕事はほとんど非常勤(パート労働)です。
正社員はごく一部で、だいたいの人が掛け持ちしてながら働いているのが現状です。
 
平均を下回る給料、不安定な雇用形態…どうやって生きていけばいいねん(この仕事は好きですよ、好きなんです)
そういえば高校の進路相談で「心理士を目指したい」って担任に言ったら「食っていけないからやめとけ」ってすごい剣幕で止められたのを思い出しました・・・。
強行突破して大学に入りましたが、期待を裏切らない結果となり、ようやく先生の言葉の意味がわかりました。
 
フロイトが昔に
「生きるとは、愛することと働くことだ」と言っていたようです。
それを軽率に解釈し、人並み(同年代の社会人並み)に働けずに困窮している私は「生きる資格ないのかな」って考えたりしてました(当時は例にもれず病んでますね)。
 
 
「世の中お金じゃない」って言いますが、それは綺麗事です。お金は大事です。
ここでのお金とは経営者や投資家などのいわゆるお金持ちが稼ぐぶっとんだ金額ではなく、人が1人生活するのに必要な程度(大体手取り20万程度)のお金です。
 
お金がないと簡単に人は病み、常に不満を抱えるようになります。
コンビニの100円コーヒーさえ買うのに迷い、外食はいつも一番安い定食セット。友達とも気軽に遊びに行けなくなります。
購買判断の第一条件がいつも値段です。値段でしかものを選べなくなります。
 
税金も払わなければいけませんが、それが苦しくて、一人前にお金を払えない自分が情けなくなってきます。自尊感情が根こそぎ持っていかれます。
そして、低賃金で働き、好きなものも買えない、自立して生活したいけれどそれも難しい、身体だけは疲弊しているということが続くと、自己肯定感めっちゃ低い心理士が誕生します。
 
そうなると、意欲も減って、仕事もやる気がなくなってきます。「どうせ時給上がらないし」「どうせ安月給だし」・・・
資格を取った時に誓わされた「自己研鑽」どころではないのです。
まず生き抜くことに必死すぎて自己研鑽は二の次になってきます。(研修費とかスーパーヴィジョン代、地味に高いですよね)
 
 
心理の仕事って「傾聴」とか「話聞いてアドバイスしてあげる」ってイメージが強くて「誰でもできそう」「明日からできそう」って思われがちです。
まさか傾聴するために専門的な知識技術が必要で、大学院まで進む必要があるなんて夢にも思いません。
でもこれが意外と奥が深いし難しいんです(奥の深さについては諸先輩方の本を読んでいただいて、ここでは割愛します)。
 
こういうことを言うと、「金のために人の話聞いいるのか」「金で作られた共感なのか」という意見が出そうですが、そうじゃないです。
 
心理士の仕事って、とても難しくて人のネガティブな部分に触れることが多いです。時には希死念慮、時には激しい怒り、恨み…(もちろんポジティブな感情もありますよ)。
いわゆる感情労働というやつです。
 
感情労働とは、
顧客などの満足を得るために自身の感情をコントロールし、常に模範的で適切な言葉・表情・態度で応対することを求められる労働のこと。(中略)感情労働による疲労や心のは回復しにくく、メンタルヘルスの不調を引き起こすことも少なくないため、社会問題化している。(コトバンクより))(https://kotobank.jp/word/%E6%84%9F%E6%83%85%E5%8A%B4%E5%83%8D-802230)
 
 
 
つまり、精神的な負荷が強く、メンタルの不調を引き起こす可能性が高い仕事です。
それを引き受けるのに、低賃金で自尊心ヘロヘロになってる心理士で大丈夫なんですか??ちゃんと機能できますか?という話です。
(給料上げれば解決するかといえばまた別の話ですが、自尊心が低い心理士にケアはされたくないですよね。)
 
 
 じゃあなんでこんなことになっているのか?
●そもそも心理士職の募集が少ない
→競争率が高くなる(みんなやりたい)
→多少賃金を低くしても、貴重な働き口なので採用辞退はしないし、就職後も辞めない(雇用者にとってはおとく)
→低賃金ループの完成
→心理士の自己肯定感(自己価値観)の低下
 
だと思っています。
 
 
 
この制度を変えたい!運動しよう!とかのつもりはありません。
だってこんなこと何十年も言われてきたのにいまだに変わってないし。どうせすぐには変わりません。
碩学の偉大な諸先輩方、なんとかしておいてほしかったぜ
 
じゃあ、こんな環境を与えられた我々心理士は、どうやって生き延びるのか?それを考察したいと思います。
せっかく苦労して取った資格、憧れの仕事。できればお金で悩みたくない。自己研鑽したい。
「対人援助職はこんなもんだ」「経験積めるから我慢」はもうやめましょう。
 
じゃあどうしたら良いのか???
次の記事で私なりの解決策を書いてみようと思います。